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作田富幸 略歴

1984    東京造形大学美術学部版画専攻卒業
1990    日本版画協会会員
1991    日本美術家連盟会員
1993    文化庁芸術インターンシップ生
1997- 2005 共立女子大学非常勤講師
2000-03 創形美術学校非常勤講師
1996-   文房堂アートスクール講師
2006-07 文化庁海外留学制度1年派遣研修員(オランダ)
2007-     横浜美術短期大学非常勤講師
2009ー11 東京芸術大学非常勤講師  
2014ー21   女子美術大学非常勤講師
2017-     女子美術大学大学院非常勤講師
2018-21 日本大学芸術学部大学院非常勤講師
2019-22 東京造形大学非常勤講師
2022-        女子美術大学特別招聘教授
2022-        日本大学客員教授

<アーティストインレジデンス>
1995、2013フランツマゼレールセンター、ベルギー
2012    アルガ―デン版画工房、 スエ―デン
2013    アトリエイレ版画工房、カナダ、  メガロ版画工房、オーストラリア 
2014    マルモKKVグラフィック、スエーデン
2015    グアンラン版画工房、中国、 サーキュレイアー版画工房、モントリオール・カナダ
2018       ラセイバグラフィカ、メキシコ


<ワークショップ>
2006         銅板3版色刷りメゾチント、国立台湾芸術大学、台湾
2008       銅版画制作講座 黒部市美術館,     
版画講座(全10回)町田市立国際版画美術館 附帯版画工房
2009         銅版画講座、武蔵野市立美術館
2014         第7回ドウロ国際版画ビエンナーレ Douroポルトガル
2017         メゾチントフェスティバルー銅版画マラソン、エカテリンブルグ美術館、ロシア
2018         銅版画講座、エカテリンブルグ美術館,
 メゾチント講座、ラセイバ・グラフィカ工房、メキシコ

<個展>
1990  フタバ画廊(銀座、東京)             
1993  ART BOX ギャラリー 企画(東京),
  画廊 パティオ 企画(山形)
1994  ぎゃるり葦 企画(山形)
1996  ギャラリー伸 (東京)
1997  画廊 石上(静岡)
1998  ギャラリー伸 (東京),
 ぎゃるり葦 企画(山形)
2000  ギャラリー伸 (東京)
2001  たかなし画廊 (静岡)
2004   shomeido 画廊 (東京)
2005   不忍画廊 (東京)
2007   CBKU(Centrum Beeldende Kunst Utrecht)、オランダ
2008  不忍画廊(東京)、ギャラリー歩歩琳堂(神戸)、乙画廊(大阪)、ギャラリー青城(仙台)、楓画廊(新潟)
2009   松明堂画廊 (小平市)
2011   楓画廊 (新潟市)
2012   アートゾーン神楽岡(京都)
2013   アートスペース88(国立市、東京)、ギャラリーコンティーナ(東京),  Atrier de Ille, (ケベック、カナダ)
                     Silesian Teatre, (カトウヒッゼ、ポーランド)
2014   不忍画廊(東京), BWAギャラリー(カトワイズ、ポーランド), コートギャラリー国立(国立市)
2015   Bunkamuraギャラリー(東京) 
2017   アトリエ サーキュレーター (モントリオール、カナダ)、不忍画廊 (東京)、ダビドソン ギャラリー(シアトル アメリカ)
2018   エカテリンブルグ 美術館 (エカテリンブルグ ロシア), ラセイバ グラフィカ (ハラパ メキシコ)
2019   コートギャラリー国立 (国立市 東京)
2021   ギャラリー くじらのほね (千葉市)

<主な展覧会>
1983  第51回日本版画協会展 ,以降毎年出品
1986  第19回文化庁現代美術選抜展
1989  Washington Centennial Celebration Contemporary Japanese PRINT,U.S.A.       
                    Contemporary Prints of Japan ,Australia, 第11回国際インパクトアートフェスティバル(京都)
1991  第24回文化庁現代美術選抜展, グループ(M3 +S2 )展(藤の木画廊、千葉)~1995
1993  第2回高知国際版画トリエンナーレ展, グループ展(韓国), Taejon Expo '93 International Exhibition of Graphic Arts ,Korea
                    The 1st International Print Biennial-astricht, Neterlands, 第三回 ART BOX大賞展
1994  International Print Treinnial '94 ,Kracow, Poland, 第14回天理ビエンナーレ、第20回日仏現代美術展 佳作賞、 

      第5回柏市文化フォーラム104 (大賞)、第11回宇部絵画ビエンナーレ、 第5回ミヤコ版画賞展              
      4人の現代版画作家展かながわ版画振興会 (ART SPACE 88、東京)
1995  国際蔵書票展(Galerie VIVANT, 東京)、 第一回東京国際ミニプリント トリエンナーレ、

      未来のノスタルジー-山形同時代作家展 (山形美術館企画)、SNZ PRINT EXHIBITION(東京)
      銅版画4人展(ギャラリーBON、兵庫)、第3回さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ、第6回ミヤコ版画賞展
1996  第16回天理ビエンナーレ1996、 第11回現代版画コンクール (大阪府立現代美術センター)
      第14回伊豆美術祭絵画公募展、 第10回ソウル国際版画ビエンナーレ
1997  THE FIRST INTERNATIONAL MINI-PINTBIENNIAL, CLUJ,ROMANIA.、 第42回CWAJ版画展
1998  第18回天理ビエンナーレ1998、 棟方版画大賞展、 第1回神戸版画ビエンナーレ1998
      第2回東京国際ミニプリント トリエンナーレ、 あおもり版画大賞展、神奈川国際版画トリエンナーレ98
1999  第44回CWAJ現代版画展、中華民国国際素描・版画ビエンナーレ、第1回山本鼎版画大賞展、 第1回池田満寿夫記念芸術賞展
2000  第45回CWAJ現代版画展、 Y2K International Exhibition of Prints(台北)

      MILLENNIUM GRAFICAINTERNATIONAL PRINT EXHIBITION IN YOKOHAMA
      版画集「東京百景」完成記念展(新宿伊勢丹美術館)、ASAHI A EXHIBITION (朝日アートギャラリー)
2001  版―遊泳展(あかね画廊)、 第46回CWAJ現代版画展、 第10回中華民国国際版画/素描ビエンナーレ展台湾)
2002  第2回山本鼎版画大賞展、  第47回CWAJ現代版画展、

2003  版―遊泳展 (あかね画廊、銀座)、幻想のエロチカ展 (不忍画廊、東京)
2004  異次元の世界展(Bunkamura Gallery)
2005  第6回高知国際版画トリエンナーレ
2005  アートフェア東京 (東京国際フォーラム・展示ホール)       
2006  ハンガノミリョク展06(不忍画廊)
2006  Buitengewoon 版画展(Nagele Museum, オランダ)、 第12回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ(台湾)
2007   World Art Delft gallery Project of the breast cancer,(デルフト、オランダ)
2008  第5回BIMPE V, 国際ミニプリントビエンナーレ (バンクーバー、カナダ) 
2010  2人展 gallery Harmoniaユバスキュラ、フィンランド)
2011   第7回フィンランドミニプリント トリエンナーレ展、 A-gallery グループ展(チェルシー、ニューヨーク)
      第10回レッセドラ ミニプリント、 第16回space国際版画展(韓国)、グアンラン 国際版画ビエンナーレ (中国)
      第20回ユーモアと風刺国際美術ビエンナーレ(ブルガリア)、 第31回カダケス ミニプリントコンペ(スペイン)
      第4回イスタンブール国際版画コンペ (トルコ)、 第8回ブリティッシュ国際ミニプリント展(イギリス)
      第9回ルーマニア国際版画ビエンナーレ(ルーマニア)、

2012  第3回バンコク国際版画・素描トリエンナーレ(タイ)、 第12回レッセドラミニプリント国際コンペブルガリア)
      第6回DOURO国際版画ビエンナーレ(ポルトガル)、 第57回CWAJ現代版画展(東京)   
      グループ展  CBKU ギャラリー、(オランダ)、 タリンドローイングトリエンナーレ(タリン、エストニア)
      第7回BIMPE国際ミニプリントビエンナーレ(カナダ)、 アーティストインレジデンス展アルガ―デン(スエ―デン)
      第15回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ(台湾)
2013  第2回インターナショナルメゾチントフェスティバル(,ロシア)、 チュリブナグラフィック(ルーマニア)
2014   第16回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ(台湾)
2016  インターナショナル プリント ビエンナーレ PRINT AWARDS, ロンドン、イギリス) 
2017  インターナショナル メゾチントフェスティバル、(エカテリンブルグ ロシア)
2018  OSTEN 素描ビエンナーレ (スコピエ マケドニア)、 第3回マカオ版画トリエンナーレ(マカオ)、ブルーロッカープロジェクト 
2019  グループ展「百鬼夜行展」(藝大アートプラザ 東京)
2022   グループ展「花と蕾展」 「メメントモリ」(藝大アートプラザ 東京)

<受賞>
1985  第53回日本版画協会展(協会賞)
1990  第58回日本版画協会展(準会員賞)
1993  第三回 ART BOX大賞展(麻布美術工芸館賞)
1994  第14回天理ビエンナーレ道友社賞、  第20回日仏現代美術展佳作賞、  第5回ミヤコ版画賞展(入賞) 
2005  第6回高知国際版画トリエンナーレ(大賞)、ルーマニア国際ミニプリントビエンナーレ(Ex aequo Prize)
2008  第5回BIMPE V, 国際ミニプリントビエンナーレ(バンクーバー、カナダ)、グランプリ受賞
2011  第20回ユーモアと風刺国際美術ビエンナーレ(ブルガリア) 素描と版画部門 1席受賞
2012  第3回バンコク国際版画・素描トリエンナーレ (タイ) 買い上げ賞
        第15回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ (台湾)佳作賞      
             第7回BIMPE国際ミニプリントビエンナーレ (カナダ) グランプリ受賞
2013  インターナショナル プリントアワード CARMEN AROZENA(マドリッド、スペイン) グランプリ受賞
             第17回バルナ国際版画ビエンナーレ (バルナ、ブルガリア) 1stPrize
2014  第16回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ (台湾)銀賞      
2015  第4回バンコク国際版画・素描トリエンナーレ  (タイ) 買い上げ賞、
  第5回グアンラン国際版画ビエンナーレ (中国)受賞
      マカオ 国際版画トリエンナーレ(マカオ)、佳作賞、 ビトラ国際版画トリエンナーレ(マケドニア)、 グランプリ受賞
2016  第17回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ (台湾)佳作賞 

<作品収蔵>
      黒部市美術館、 ロサンゼルス カウンティ美術館(アメリカ)、  ユーモアと風刺の美術館(ブルガリア)
       The Museum of Contemporary Art(タイ)、
  国立台湾現代美術館(台湾)、 Jordan Schnizer Museum of Art(アメリカ)
       中国版画博物館(中国)、 ノボシビルスク州立美術館(ロシア)、
エカテリンブルグ美術館(ロシア)


 

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ある時、僕が描けるのは僕自身しかないことに気が付いた。それ以来、自己の内側の声に耳を澄まし、、、多くは内省であるが、、、その言語や感覚などをリアルにカタチにしようとしてきた。私小説が時に強い共感を呼ぶのは、述べられる内容は誰しもが共有する普遍的なものだからである。僕が描くのは自画像ではあるが、同時にあなたの肖像でもありたいと思う。

「版画を始めてから、考えたこと」

版画をやり始めたのは、大学生1年の油絵具の触感と展開に行き詰まりを感じていたころ、シルクスクリーンの3色分解の仕事をしていました。‘60年代から’70年代の版画の新しい思考の作品が隆盛していたことに魅力を感じていましたし、何より、終わりのないタブロー制作の過程、何をやっても良い、なんでもできるタブローの発想が、余計に何をすれば良いかがわからなくなっていたこともあり、版画のシステマチックな要素と、刷りをすることでとりあえず制作を終わりとしてくれるような工程の中にあることの気安さに心魅かれました。

当初は手で描くことへの反発が大きく、もっぱら写真を使ってマン・レイのような仕事や、印刷でやる4色分解などを、リスフィルムなどに焼き付け展開してみました。テーマはもっぱら自画像的要素が大きかったように思います。私の通っていた大学にはバキューム式のシルクスクリーンの刷り機がドンと工房に構えていて、版を上下するたびに機械的なバキューム音が鳴り響いたりして、そのことが何かメカニカルに仕事をしている気がして楽しかったのです。また、70年代の版画の影響で、よく松本 旻 (あきら)の点で作ったような作品を真似していました。何かハイカラなことがしたかったのです。それを1年間ほど、大学2~3年のころ制作したのち、銅板の質感に惹かれ銅版画の世界に入っていくわけですけれど、銅板を用いてもdrawingはしないで写真による焼き付けと腐食に、少しだけエッチングを加えるような仕事を続けていました。シルクスクリーンでもう少し自由に展開したいと思っていたことを、銅板でやり始めたと言ってよいと思います。テーマももっぱら、自分、自分、、。自分の唇の写真を使って連続させたり変形させたりする仕事でした。自分が高校の終わりから浪人のころに体験した挫折などの要素や、性的な未熟さの裏返しとも言える唇へのこだわり、のようなものをテーマにしていました。「接吻」「プリリンリップ」などの作品がそうです。銅板も2~3版多色で色を加え、写真の硬質な質感にドローイングを加えたりしていましたが、次第にドローイングの欲求が強くなり始めました。写真だけですと、やはり組み合わせはできますが、それ程自由にイメージを展開できなかったからです。そのころマックス・エルンストのコラージュ集「絵画の彼岸」に出会いました。この出会いは、現在まで制作活動を続けてきましたが、最も興奮させるショッキングなものでした。自分の中でシュールレアリズムという言葉が急激に重みを増してきた時期ですが、それらコラージュの手法は自己の内面から発するイメージだけでは展開できないもどかしさのようなものを、急激に絵画の世界へと押し広げてくれるような、大きな可能性を感じました。

自分が外界に発すること、言葉にすること、しゃべること、会話。突き詰めていえば表現することのもろもろのイメージを、唇から吐き出すような構図の銅版画を大学の卒制で描いて、「コラージュを銅版画のドローイングでやってみよう」と決心するに至りました。版画の世界に入ったときに多用された写真を用いることは止め、全てドローイングに切り替えました。唇の写真は消えて、吐き出すものの寄せ集めだけで絵を作ってみようと思ったのです。この頃は大学卒制のころでしたし、自分の学生生活の集大成のつもりで、B1サイズ大型の銅板を2版多色にし、長い期間をかけて作りました。始めたのはまずコラージュする資料集めです。エルンスト、ダリ、フックス、瑛九、などの好きだった作家の作品の一部をとにかくコピーしました。芸術雑誌や図書館などの古い図鑑や広告、雑誌など、とにかく自分の身の回りのもの全てをあさり、収集、コピーをくりかえしを徹底して行いました。不思議とそのような行為が作品のイメージを作り上げるのかもしれません。それを実物大の画用紙に下絵を描くときにコラージュしながら描くわけです。下絵には十分時間をかけました。何度も何度も試行錯誤を繰り返し、最後の方は下絵ももう見るのも嫌になるほど突き詰めて、とにかく下絵の段階で完璧にしようと思ったのです。製版は私の場合は作業的要素が多いので、あとは技術的な部分と時間とのかねあいでした。結局卒制には間に合いませんでしたが、翌年の版画協会で受賞することができました。これが「集合Ⅱ」でその後の集合シリーズの原点の作品です。

集合シリーズで自分の方向性とスタイルを掴むことができたので、多少の変化はありながらも、「集合Ⅻ」までの連作の中で迷うほどではなく展開できたと思います。一方実はその間も他生の迷い、「何を描けばよいのか」という問いは常に自分の中に渦巻いていて、やはり、描き出し、下絵制作の段階は試行錯誤の繰り返しであったと記憶しています。集合シリーズには、情感のようなものは入ってくるのか?否定するのか?絵を作ることと相反して、コラージュするだけのニュートラルな感覚とのせめぎあいで絶えず揺れていました。

しかし、いつからかそのような資料集めがどこか他人のフンドシで相撲を取っているような、自分の内面から出てきたものでないような気がしてきました。また、当初はシュールレアリズムの作家やウイーン幻想派などに素直に感動していて、そのような外的刺激が強かったのですが、、つまりハウズナー、フックス、ダリなどの真似をして描くことで十分だったのですが、それにさほど感動しなくなったこと。新しい作家の画集などを購入したりして新しい刺激を求めながら過ごしてきましたが、それがネタ切れになってきたこと。そのような新作を作るたびごとの資料集めの面倒さ、などの気持ちの蓄積があって、とりあえず「集合」シリーズを中断することにしました。

次に取り組んだのは、集合シリーズで集合していた1つ1つのものをピックアップして大きく拡大して見せることでした。そしてなるべく自分のオリジナルのイメージで絵を作ろうと考えたのです。集合の時には画面にイメージでもものでもなるべくたくさんの要素を詰め込んだのですが、その要素を2~3つくらいに限定して、そこに自分のテーマやメッセージ性を織り込もうと思いました。「下り坂の歩行」「会話Ⅰ・Ⅱ」などのシリーズです。これらは集合シリーズ以前にテーマにしていた自己の内面の世界、挫折感などの体験が主要なモティーフでした。ただ、そのような一連の内的世界の作品を作りつつも、自分の中にモヤモヤが絶えずあって、途中何度も「集合」に帰ろうと「集合ⅠⅩ」「ⅩⅩ」などの作品を作ります。自分のオリジナル、テーマ、

コンセプトなどの問題に直面し、結論を出せずにいたのです。

コンセプトで悩む間も技術的にはどんどん進歩していきました。ビュラン加筆やエッチングの描画と腐食の関係性や尽きることのない技法習得の欲求などです。3版3色刷りのアルチンボルトシリーズは、銅版画の多色刷りという、技術的に高度なことを、とにかく習得したい思いで、刷りでの独自の版見当や製版の方法を確立しました。ただ、できると判ってからは興味がなくなりシリーズを止めました。一方、色彩を使うことの疑問と、ぬり絵的なリンカクで当てはめるような色使いに疑問を感じ、色を排除しモノクロの世界に、1版の刷りにと限定しました。

悩んで「集合」を再開したりする中で、自分の立地点がわからなくなってきて、その後何も描けなくなってしまいました。2001~3年頃、描くことの意欲が急激にダウンし、下絵を描いている最中にコンセプトに行き詰まり、鉛筆が全く進みません。“人”を描こうと決め「5人娘」のシリーズを手掛け、その後「一人」で受賞したりしてある程度も評価もいただいたのですが、アルチンボルトがやったような借り物のイメージの作品というヒケメから抜け出せませんでした。

2006年から1年間、オランダの版画工房で研修をしました。全く何を描いたら良いかわからない中で一人ユトレヒトの工房で悶々としました。その時突然「このように悩んでいる自分自身を描けばいいのだ」という声が聞こえてきて、その時気持ちがストンとそこに落ちた気がして納得したのでした。「ユトレヒトダイアリー」のシリーズでは毎日感じている自身の感情や感覚を素直に吐き出すように描きました。海外でのショッキングな経験や社会性の欠如から、帰国後は精神的にはどん底の状態でしたが、作品も比例して真っ暗な世界になってしまいました。

自分の中ではオランダ以前とオランダ以降では違う次元にいるような気がします。作品の評価がどうかは別にして、「自分のことを描けばよいのだ」という天の声に多分僕は救われたのです。また、オランダでうまく立ち回れなかった悔しさからか、海外のコンペやアーティストインレジデンスをガンガン志向していきました。いくつかのコンペの受賞や海外の作家や英語でのコミュニケーションの楽しさや、見知らぬ地での新たな経験と異なる文化の認識など、グローバルな展開がありました。作品の指向性からぶれを避けるために、モティーフを“顔”に限定して、考えないオートマチズムの制作をやろうと、1日1作品完成させる「100faces」を制作しました。アーティストインレジデンスで出会った海外の友人のポートレイトを「friends」のシリーズで制作。これだけは自己の内面の世界でなく、外の世界、友人の第一印象などをもとに描いたものです。

その後いくつかの非常勤講師の職にも恵まれ、学生の若いエネルギーや、教えるために自身も作家性を磨く必要があり、そのようなしのぎあいが社会性も得られる充実した感覚でいるのです。(2024,8)

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